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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)33号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1 成立に争いのない甲第二号証によれば、本願明細書には、本願考案の技術的課題(目的)、構成、作用効果について次のとおり記載されていることが認められる。

本願考案は、ダンボール箱等の容器にラベルを貼着する装置におけるラベルの貼着ヘツドに関するもの(第一頁第一七行ないし第一九行)であつて、従来の貼着ヘツドは装置本体に固定されているため、正常な位置にラベルを貼着することが困難で、しばしば位置ずれを起こし、作業能率が悪く、極端な場合は被貼着体が破損することもある(第一頁第二〇行ないし第二頁第一〇行)との知見に基づき、被貼着体がベルトコンベヤに不規則に載置されて移送されてきても、貼着ヘツドを被貼着体の貼着面に対応して自由に回動させて被貼着体の表面にラベルを密着させることができ、作業能率もよく、被貼着体を破損することもないラベル貼着装置の貼着ヘツド体を提供すること(第二頁第一七行ないし第三頁第二行)を技術的課題(目的)とし、実用新案登録請求の範囲1(本願考案の要旨)記載の構成(第一頁第五行ないし第一〇行)を採用したものであり、ダンボール箱等の被貼着体がベルトコンベヤ等に載置され貼着位置まで移送されてきた場合において、たとえ被貼着体が不規則に並んでいても、正確にかつ被貼着体の表面に密にラベルを貼着でき、しかも被貼着体を整列させる必要もなく作業能率が極めてよく、被貼着体を貼着ヘツドの押圧時に破損することもない(第六頁第一八行ないし第七頁第五行)という作用効果を奏するものである。

2 引用例に審決の理由の要点2及び3摘示の技術内容が記載されていること、引用例記載のものの<1>ラベル貼付ヘツド(1)、<2>クツシヨン層(36)、<3>吸気室(32)、<4>吸気小孔(38)、<5>吸気管(41)、が本願考案の<1>貼着ヘツド、<2>貼着弾力板、<3>貼着ヘツドの縦孔、<4>通孔、<5>吸気管にそれぞれ相当することは、当事者間に争いがない。

原告は、審決は、引用例記載のもののラベル貼付ヘツドは支持軸(34)ないし引張ばね(39)(本願考案の「シリンダロツド」に対応する。)に回動自在に固定されていないから、引用例記載のものの支持軸(34)ないし引張ばね(39)は、本願考案のシリンダロツドに相当するものでなく、本願考案と同等の作用効果を奏することができない点を看過誤認した旨主張する。

そこで、引用例記載のものの支持軸(34)ないし引張ばね(39)について検討すると、成立に争いのない甲第三号証によれば、引用例には、「貼付ヘツド(1)の直進に対して貼着位置に送られた物品のラベル被貼着面が第5図に示す如くラベル吸着保持面と平行でない状態にあるときは(中略)該保持体(30)はその取付け基部が球面座(33)となつているので、駆動体の前進駆動に伴ない当接した部分の抵抗に応じ球面受座(25)に沿つて自由側が被貼着面(A)に向け回動し」(第五頁左上欄第九行ないし第一七行)と記載され、右記載を参酌して第5図(別紙図面(二)参照)をみると、球面受座(25)又は球面座(33)とは曲率半径が等しく、それらの中心は同じであると認められ、球面座(33)は、技術常識上球面受座(25)又は球面座(33)の中心を枢点として同一平面内だけでなく、いずれの方向へも回動することが図示されていると認められる。

右認定事実に前記審決摘示の引用例の記載事項を総合すると、引用例記載のものにおいて、ラベル貼付ヘツドは、本願考案のシリンダロツドに対応する支持軸(34)ないし引張ばね(39)に回動自在に固定されているというべきである。

原告は、一般に、回動自在とは、甲第四号証ないし第七号証に記載されているように、枢点あるいは枢軸を中心として回ることを意味しており、引用例記載のもののように、枢点あるいは枢軸を回るのではなく、球面座(33)が滑動するように、同一平面内ではない複雑な回転運動をするものは、回動自在とはいわない旨主張する。

しかしながら、技術用語としての回動自在は、枢点あるいは枢軸を中心として同一平面内だけでなくいずれの方向にも回ることを意味するものであつて、枢点あるいは枢軸を中心に同一平面を回るものに限定されるものではない。このことは、成立に争いのない乙第一号証ないし第四号証(昭和四三年第二四一〇七号、昭和四七年第三三一四六号、昭和五二年第四五七三七号各実用新案出願公告公報、及び昭和四九年特許出願公開第一二二五一号公報)によれば、枢点あるいは枢軸を中心にして同一平面に限定されず、左右上下に回動する装置(ロツドアンテナ装置、球形ゴムジヨイント、自動車のサイドミラー、ユニバーサルジヨイント)について、これらの公報では、いずれも「回動自在」という技術用語を用いていることが認められることからも明らかであつて、そうであれば、引用例記載のものの前記シリンダロツド(支持軸(34)ないし引張ばね(39))の構成も回動自在といえるものである。

しかも、本願考案の実用新案登録請求の範囲には、「貼着ヘツドがシリンダロツドに回動自在に固定された」とのみ規定され、「回動自在」について何ら限定する記載がないから、本願考案と引用例記載のもののシリンダロツドの構成は回動自在である点において実質的な差異はないというべきである。

また、原告は、本願考案において貼着ヘツドがシリンダロツドに、たとえば軸受部がシリンダロツドの先端を枢軸として回動自在に固定されていることを理由として、引用例記載のものとの作用効果の差異を主張するが、本願考案において回動自在について何らの限定も存しないことは前述のとおりであり、前掲甲第二号証によれば、本願明細書に記載された前記1認定の作用効果は、その構成を原告主張のもののように限定した実施例に基づく作用効果であることが認められ、本願考案の要旨に基づく作用効果とはいえないから、原告の右主張は理由がない。

したがつて、「引用例の支持軸(34)ないし引張ばね(39)が本願考案のシリンダロツドに相当するものと認められ」、「引用例記載のものも引張ばね(39)、弾発体(45)を適宜調節することにより、シリンダを用いた本願考案と同等の効果を奏するものと認められる」とした審決の認定に誤りはない。

3 以上のとおりであつて、本願考案と引用例記載のものとは実質的に同一というべきであるから、審決に原告主張の違法はない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編注〕本願考案の要旨は左のとおりである。

貼着ヘツドの前面に貼着弾力板が固定され、かつ貼着ヘツドの縦穴に連通する通孔が貼着弾力板を通して貫設され、該縦穴は吸気管を介して吸気源に連通され、かかる貼着ヘツドがシリンダロツドに回動自在に固定されたことを特徴とするラベル貼着装置の貼着ヘツド体

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